判 例 紹 介 |
≪知財判例紹介「生クッキー事件」≫
平成24(行ケ)10242
審決取消請求事件 商標権 行政訴訟
平成24年11月14日 知的財産高等裁判所
第1 事案の概要
本件は,商標登録無効審判請求を成立とした審決の取消訴訟である。争点は,本件商標が商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるかどうか(商標法3条1項3号),使用により識別性を獲得したか(同条2項)である。
【本件商標】
・登録第5400678号
・指定商品 第30類「生タイプのクッキー」
第2 裁判所の判断
1法3条1項3号に関する判断の当否について
本件商標の指定商品は「生タイプのクッキー」である。クッキーは,基本的に小麦を主原料とした焼き菓子を指すが、一部に、全く焼かないクッキーも存在することが認められる。また、本件商標の指定商品自体「生タイプの」クッキーであって、商品「クッキー」の中に、生タイプのものとそれ以外のものが存在することが窺える。
そうすると、本件商標をその指定商品に用いた場合、本件商標中の「生クッキー」の部分が、需要者等に対し、生あるいはこれに類するクッキー、すなわち生タイプのクッキーを意識させることはあきらかであるし、本件商標中の「レア」の部分も、大きな「生」の文字の上に小さく読み仮名のように配されている事や、我が国において、食品に用いられた「レア」の文字が、「レアチーズケーキ」やステーキの焼き加減を表す「レア」のように、生あるいはこれに近い状態のものを指す事は公知であることに照らすと、「生」と同義であるとの印象を需要者等に与えるものであるから、本件商標は、全体としてみても、需要者等に対し、「生タイプのクッキー」を意識させるものであって、商品の品質等を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標にほかならない。したがって、本件商標が法3条1項3号に該当する商標であるとした審決の判断に誤りはない。
2法3条2項に関する認定判断の当否について
大手菓子メーカーであることが一般に知られている被告(森永製菓株式会社)も含め、複数の会社から「生クッキー」又は「レアクッキー」が販売されていることや、複数のウェブサイト等において、「生クッキー」が菓子の種類を示す語として使用されている事実に照らすと、たとえ、本件商標を付した原告(有限会社青華堂)等の商品が累計50万枚以上販売され、ある程度の人気を得ているなどの事実や証明書の記載があるとしても、本件商標について、需要者が原告(有限会社青華堂)等の商品であることを認識することができる状態になっていたとまでは認められず、他にこれを認めるに足りるまでの証拠はない。
3 結論
以上のとおり、本件商標は法3条1項3号に該当するものであり、かつ、同条2項の適用は認められないとした審決の判断に誤りはなく、原告主張の取消事由はいずれも理由がない。
なお、本レポートは情報提供を主たる目的とするものであり、正式な見解をあらわすものではありません。
(弁理士 河嶋慶太)
以上