判 例 紹 介 |
<<知財判決紹介 「ABBYROAD/アビーロード」事件>>
平成23(行ケ)10342
審決取消請求事件
商標権行政訴訟平成24年02月28日知的財産高等裁判
第1 事案の概要
本件は,原告が後記商標につき商標法51条1項に基づき不正使用商標登録取消審判請求をしたところ,特許庁が同請求を認めない旨の審決をしたことから,これに不服の原告がその取消しを求めた事案である。
(本件商標)
指定商品:第18類「かばん類,袋物」
第2 裁判所の判断
「Abbey Road(ABBEY ROAD)」は,ザ・ビートルズがレコーディングを行った「EMI
Abbey Road Studios」があり,最後のアルバムのジャケットの写真が撮られた通りの名称として,また,ザ・ビートルズの最後のアルバムのタイトルとして,広く認識されていると認められる。また,原告は,ザ・ビートルズのレコードの製作販売を行っており,平成11年にも関連会社を介してザ・ビートルズのアルバムのデジタルリマスター盤を販売していることから,原告はザ・ビートルズと密接な関連があると,広く認識されていると認められる。そして,上記「Abbey
Road(ABBEY ROAD)」と本件使用商標は,外観,称呼,観念を共通にし,類似しているといえる。
しかし,原告が,日本国内において「Abbey Road(ABBEY
ROAD,アビイ・ロード)」の表示を使用しているのは,本件アルバムの販売のほかは,原告が運営するウエブサイト「Abbey Road Studios」における,「Abbey
Road Studios」の名称を使った商品の販売のみである。また,ザ・ビートルズのオフィシャル・ストアのホームページでは,ザ・ビートルズ関連の商品が多種類販売されているが,「Abbey
Road(ABBEY ROAD,アビイ・ロード)」の名称を使用した商品の販売はない。したがって,本件アルバムを除いては,原告やザ・ビートルズの,日本国内における,これまでの「Abbey
Road(ABBEY ROAD,アビイ・ロード)」の標章等を使用した商品の販売実績は確認できない。
また,前記のとおり,「Abbey Road(ABBEY
ROAD)」は,本件アルバムの発売前から現実に存在する通りの名称でもあり,通りの名称としても広く知られているのであって,「Abbey Road(ABBEY ROAD)」がザ・ビートルズのアルバムのタイトルだけを観念させるものではない。
被告は,キャリーケースに付けた本件タグに,ザ・ビートルズがレコードデビューした年である「1962」の表記をし,また,英文で,ザ・ビートルズに関連するメッセージや「アビイロード」の説明をしている。しかし,同表記は,本件使用商標である「ABBEY
ROAD」が,ザ・ビートルズに関連する「アビイロード」通りに由来する旨を説明したものにすぎず,このような説明記載がされたからといって,需要者において,被告又は被告の販売に係る商品が,ザ・ビートルズ又は原告と経済的,組織的に何らかの関係があると認識することはないといえる。
以上によると,「Abbey Road(ABBEY ROAD)」の通りの名称が,ザ・ビートルズの音楽活動等により周知,著名になったことを参酌したとしても,被告が,音楽とは関連のないキャリーケースに本件使用商標を使用することにより,当該商品の出所がザ・ビートルズ又は原告であるとの誤認混同を生ずるおそれがある,あるいは,当該商品がザ・ビートルズ又は原告と経済的,組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であるとの誤認混同を生ずるおそれがあると認めることはできない。
なお、本レポートは、情報提供を主たる目的とするものであり、正式な見解をあらわすものではありません。
(弁理士 河嶋慶太)
以上